16、しあわせの馬車

 ひさしぶりに、きりのはれたロンドンの町を一台の馬車が走ります。
 のっているのはキャリスフォードとセーラです。
 しあわせそうに馬車にゆられているセーラを見て、だれが、ついこの間までぼろをきて、おつかいをしていた女の子だと思うでしょう。

しあわせの馬車


(パパににてるわ・・・)
 キャリスフォードのやさしい目は、おとうさんの目にそっくりでした。
 あのきりのふかい日の、おとうさんの目にそっくりです。セーラはまるでおとうさんと馬車にのっているような気もちになりました。
「わたしもよんでいいかね。」
 キャリスフォードがやさしい目をむけます。
「はい・・・」
 セーラはうなずくと目をとじました。
「小さなおくさま。」
 キャリスフォードにそうよびかけられたセーラは、うれしくてなきだしそうなのをこらえてへんじをしました。
「はい!」
 ふたたびセーラに「小さなおくさま」とよばれるしあわせがおとずれてきたのです。
 ロンドンはもう春でした。

 さいごにほかの人たちのことを少し書きましょう。ベッキーはセーラのおつきのおてつだいさんになりました。
 そして、ミンチン女学校は新しい校長先生がやってきて名前がかわりました。アーミーとロッティーはセーラの家へよくあそびにいきます。
 そうそう、家ぞくそろってセーラの家へひっこしてきたものがいましたっけ。
 ねずみのメルキセデクの一家です。しかも家ぞくはどんどんふえて、いまは十六ぴきだそうです。
 
 では、もういちどセーラのしあわせのために大きな声でよんであげましょう。

 小さなおくさま!
 

 (小公女セーラ・おわり)