みなさんのなかにもいませんか?
このお話に出てくるアーミーみたいに本を見ただけで頭がいたくなる人が。
でも、この本はとくべつです。
なぜって、本を読むのが大きらいなアーミーがいちばんすきだった友だち、セーラのことがたっぷりと書いてあるんです。
だから、本を読むなんて考えないで、セーラと友だちになるつもりでページをめくってください。
ほうら、文字がだんだんかわいい女の子に見えてきませんか。
バーネット夫人の「小公女」は、それほどすばらしいものがたりです。
この本では、長さのつごうでセーラを中心に書いてみました。
もし、この本でセーラがすきになってくれたら、みなさんがもう少し大きくなったとき、もとのお話を読んでみてください。
読む前はとても長くかんじられても、読んでしまうととてもみじかくかんじられるでしょう。
西浦 あかね
《お母様がたへ》
なに不自由なくくらしていても、どんな苦しい目にあっても、いつも気高く純真で、他人へのおもいやりをけして忘れない少女。この物語の主人公セーラは、そんなふうな、まるで小さな王女様=小公女(Little Princess)のような少女です。
じつは、セーラには二つ年上のお兄さんがいます。その少年の名は、『セドリック』・・・といえば、思いつく方も多いでしょう。そう、セドリック少年は『小公子』の主人公です。
『小公女』は『小公子』の姉妹編ともいえる作品で、十七世紀のおわりごろ、アメリカで完成しました。作者は、バーネット(Burnett)という女性で、一九四九年、イギリスのマンチェスターで生まれました。
バーネットの父親は、家具の卸し問屋をしていましたが、彼女が四歳のとき破産し、一家は貧困に苦しむことになってしまいました。後に、おじさんを頼ってアメリカに渡りましたが、貧しい生活からぬけだすことができませんでした。このような苦境の中でも、バーネットは、まるでセーラのように明るい希望をもちつづけていました。
バーネットは、少女のころから、自分で空想して、いろいろな話を友だちに聞かせるのが好きでした。そして、ついに、小説家になる決心を固めたのです。バーネットは熱心に机にむかい、作品を売って家計を助けようとしました。そして、十七歳のとき、わずかばかりの原稿料をもらい、作家としても第一歩をふみだしました。
やがてバーネットは、『小公子』を書きあげ、作家としての地位を固めました。『小公子』は、新しい国アメリカとながい伝統をもつ国イギリスを舞台にし、イギリス生まれの作家ならではの作品として、広く人びとに読まれました。その後しばらくして、バーネットは、『セーラ・クルー』という題の物語を著しました。この物語は、一度、劇場で上演してから改良を加え、アーミーなどの脇役を登場させて、一八八八年、『小公女』として完成したのです。
『小公女』は、『小公子』と同じように、どんなに運命が変わっても、つねに真心をもちつづけた主人公をえがきあげ、たいへんな人気をよび、『秘密の花園』などとともに、バーネットの名を世界中に広めた作品となりました。
また、『トム・ソーヤーの冒険』(一八七六年)など、アメリカの生活を題材とした文学が流行した当時にあって、イギリスを中心にえがいた作品としても、話題をよびました。
この本は、小学校低学年むけに、『小公女』の原作を、読みやすくわかりやすく書きなおしたものです。全体的に原作より短くなっています。機会をみつけて原作を読み、セーラの心に細かにふれたいものです。
なお、使った漢字は、小学校二年生までに習うもので、すべてにふりがなをふってあります。
<朝日ソノラマ編集部>