(20190719、JDC講演会)     発表題名:国内の視覚障害者等の読書状況とサピエ図書館について 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター 館長、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会 理事長 竹下 亘   見出 団体紹介  日本ライトハウス=1922年、大阪で創業。ヘレン・ケラーを2度日本に招請。大阪府内で4施設(リハビリセンター、盲導犬訓練所、視覚障害者情報提供施設、点字出版所)を運営。情報文化センターでは点字、音声デイジー、マルチメディアデイジー、HyMe(ハイミー)などの媒体で年間1千タイトル近い図書データを製作・提供・貸出。全視情協事務局を預かり。 「全視情協」=全国の視覚障害者情報提供施設やボランティア団体、公共図書館等の協力により、サピエ図書館を中心に、視覚障害者等への情報製作・提供を推進。添付資料参照。   見出1.サピエ図書館の仕組み  視覚障害者をはじめ読書に困難のある方々に、図書・雑誌などの情報を点字、音声、アクセシブルな電子データで提供するネットワークシステム。1988年創設の「てんやく広場」を母胎に発展し、2010年度に国の補正予算で誕生。 URL https://www.sapie.or.jp/  (サピエ図書館の歴史は最終ページを参照)  図:サピエ図書館の仕組み(数字は2018年度末) @図の構成  大きな3つのグループA、B、Cがあり、それぞれが2つの矢印で結ばれています。  Aは、サピエ図書館  点字図書データ 20万9858タイトル  録音図書データ 8万8526タイトル  テキストデイジー等 7395タイトル  全国所蔵目録 72万8459タイトル  Bは、視覚障害者情報提供施設・ボランティア団体・公共図書館等  施設・団体 382ヶ所(内、全視情協会委員101)  ボランティア 約2万人  Cは、視覚障害者等  視覚障害者、知覚や読み障害のある人、身体障害者等  164万人の内、サピエ直接利用登録者 約1万6942人                     A 以上A、B、C、3つのグループの関係がそれぞれ矢印で示されています。  BからA インターネットを介して、図書検索、着手・完成データ登録  AからB インターネットを介して、ダウンロード  CからB 電話・Eメール・手紙・FAX・窓口依頼等を介して、図書検索依頼、貸出依頼  BからC 電話・Eメール・窓口等を介して、図書検索回答、図書貸出  CからA インターネットを介して、図書検索、貸出依頼  AからC インターネットを介して、ダウンロード、ストリーミング  *Aの横に「国立国会図書館 視覚障害者等用データ送信サービス」のグループがあり、Aと両向き矢印で結ばれています。  図の説明終わり   見出2.サピエ図書館の動画上映 動画『サピエ図書館ってこんなに便利!』(6分15秒)を以下で公開中。 全視情協のホームページ  http://www.naiiv.net/ →画面右横にリンク YouTube で「サピエ図書館」と検索。   見出3.サピエ図書館の利用対象者  図の説明:4つの大小の円を並べて、サピエ図書館の利用対象者を分類別に説明。 @大きな円が上にあり、中ぐらいの円が2個、下側にあります。  大きな円の中には小さな円が一つあります。  A小さな円は「障害者手帳を持つ視覚障害者」(厚労省、2018年)で合計312,000人  その内訳として  1・2級(全盲・光覚)が72.8%、3〜6級(弱視)が27.2%  65歳以上が69%(60歳以上77%)  中高年以降の中途視覚障害者が過半数 18歳未満が4,900人  盲ろう者が13,952人(全国盲ろう者協会、2014年発表)  B大きな円は「日本眼科医会発表(2009年)の視覚障害者」で164万人。  その内訳として  ロービジョン144.9万人、視力0.1以下18.8万人  緑内障24%、糖尿病性網膜症21%、変性近視12%、加齢黄斑変性症11%、白内障7%ほか。  C左下の中ぐらいの円は、「読み書きの困難」(ディスレクシア、学習障害等)。  文部科学省の2012年12月の調査では、「読み書きに著しい困難のある児童・生徒」は小中学校通常学級の2.4%(概算24万人)  D右下の中ぐらいの円は「身体障害により書籍の保持や操作、目の焦点を合わせたり、目を動かすことが困難」(上肢・全身障害、神経難病等)。  上記CとDの人たちが、「マラケシュ条約」と「改正著作権法」第37条第3項(190101)における「(視覚障害)その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」。  図の説明終わり  見出4.サピエ図書館の製作、登録、貸出、ダウンロード実績の推移。  説明:折れ線グラフと表で上記実績の推移を示したもの。  1.点字図書館利用状況  1982(S57)年度、1992(H4)年度、2013(H25)年度、2016(H28)年度の順に数字を記載  点字図書所蔵合計=308,000 404,000 526,842 502,856  録音図書所蔵合計=167,000 294,000 885,265 834,168  点字貸出数合計=130,000 80,000 56,122 60,392  録音貸出数合計=293,000 403,000 941,838 1,129,731  利用登録者数=68,000 63,000 79,000 80,891  2.サピエ利用状況  2013(H25)年度と2017(H29)年度の数字を記載  サピエ個人会員(利用者)数=12,475人 16,015人  点字データ登録タイトル数=155,616 198,145  点字データダウンロード合計=719,586 750,863  音声デイジー登録タイトル数=49,558 80,846  音声デイジーダウンロード合計=2,053,108 2,989,368  テキストデイジー登録タイトル数=533 5,541  テキストデイジーダウンロード合計=29,158 203,744  注:サピエの利用統計以外の数字は、日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会発行「日本の点字図書館」1、11、30、33を元に試算。年度、項目により回答館数が異なるため、回答館数を調査対象の全館(84館)に揃えて推計試算。録音図書は、1982年度と1992年度はカセットテープのみ、2013年度はデイジーとカセットテープを含む。所蔵合計は、同一タイトルやサピエに未登録の図書が多数含まれているため、サピエ図書館の登録数よりも大幅に上回っている。  説明終わり   見出5.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律  2019年6月21日成立・施行。今後の視覚障害者等の読書環境の発展・充実の基盤。  第一条(目的) 障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化(文字・活字文化振興法……)の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与する……。  第三条(基本理念) 一 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等【特定電子書籍】の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍【特定書籍〜点字、拡大書籍等】が提供されること。  二 【上記書籍の】量的拡充及び質の向上が図られること。  三 視覚障害者等の障害の種類及び程度に応じた配慮がなされること。  第九条(視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等) 第十条(インターネットを利用したサービスの提供体制の強化)  ★この条文にアンダーライン 第十二条(視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等) 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。  ★この条文にアンダーライン 2 国は、書籍を購入した視覚障害者等からの求めに応じて出版者が当該書籍に係る電磁的記録の提供を行うことその他の出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。  【参考】サピエ図書館〜誕生から今日まで30年余の歩み 1988(昭63)年 「IBMてんやく広場」発足(点訳データのパソコン通信ネットワーク。1991年までの4年間で加盟101施設・団体、点訳PC約1,500台に)  1994(平6)年 国立国会図書館「点字図書・録音図書総合目録」試験稼働。個人利用者の点訳データの直接利用が可能に(個人利用者158人)  1998(平10)年 「ないーぶネット」に名称変更。運営が全視情協に移管。  1998(平10)年〜01(平11)年 国の補正予算で全国へデイジー図書を製作・配付、再生機貸与(テープ図書のデイジー化3,181tl、プレクストーク8千台) 2001(平13)年  インターネット版「ないーぶネット」始動 2004(平16)年  「びぶりおネット」(録音図書のインターネット配信)スタート 2007(平19)年  著作権法改正で、録音図書データの自動公衆送信が認められる  2009(平21)年  国の補正予算で新ネットワーク開発整備  2010(平22)年 「サピエ図書館」誕生(ないーぶネットとびぶりおネットを統合)  2020(平30)年 マラケシュ条約発効、改正著作権法施行、読書バリアフリー法施行  以上